土屋税務会計事務所

税に関するコラム

休業日に店舗を委託利用させる場合の実務ガイド

休業日に店舗を委託利用させる場合の実務ガイド

1. はじめに

自店舗の休業日に第三者へ営業を委託する「間借り営業」は、設備の遊休時間を収益化できる一方、〈賃貸借契約・行政許可・保険・税務〉の4領域を整理しないと重大な契約違反や損害負担を招くおそれがあります。本ガイドでは、売上主体を誰にするかで代表的な2方式を示し、それぞれのメリット・デメリットと具体的な対応策をまとめます。

2. 2つの方式

方式

概要

実務イメージ

① 売上主体=オーナー(委託者取り分70%)

決済・レジ・領収書はすべてオーナー名義で行い、営業後に売上の70%を委託者へ支払う。

「自社イベントの一形態」として扱うイメージ。オーナーが売上高100%計上するため経理と消費税負担は重いが、レジ締め・事故対応を一元管理しやすい。

② 売上主体=委託者(オーナー取り分30%)

決済は委託者名義で行い、月次などで売上の30%を利用料としてオーナーへ支払う。

オーナーは“スペースビジネス”に徹したイメージ。経理は軽いが、売上実態を把握しづらく、賃貸借契約上は転貸色が強くなる。

3. 4大論点と方式別影響

論点

① オーナー売上型

② 委託者売上型

転貸禁止条項

オーナー主体のままなので承諾を得やすいが、専有性が高いと「実質転貸」と見なされるため使用承諾書が必要。

第三者営業=転貸。賃貸借契約の変更契約または転借人覚書が必須。

火災保険・施設賠償

建物火災保険の被保険者はオーナーで問題なし。委託者がPL保険加入し、オーナーを追加被保険者に。

委託者に火災拡張特約・施設賠償責任・PL保険をセット加入させ、オーナーを追加被保険者とする。

保険加入義務の文書化

契約で「委託者はPL保険○千万円加入/証券写し提出」と明示。

上記に加え火災保険特約の付帯・免責負担を具体的に規定。

消費税(インボイス)

オーナーが課税売上を100%計上。委託者が免税なら仕入税額控除80%(2026年10月まで)の制限あり。
簡易課税なら100%が売上となるので税負担が重い。

オーナーは30%のみ課税売上。委託者が課税事業者ならインボイス発行義務、免税なら控除漏れが発生しない。簡易課税なら30%が売上となるので税負担が軽い。

4. 契約書に盛り込むべき主な条項(例示)

  • 営業主体・売上帰属(例:売上主体は甲、乙は売上総額の70%を受領)
  • 報酬(歩合)計算式・支払方法(決済手数料控除有無を含む)
  • 転貸承諾確認(物件オーナーの承諾書添付)
  • 保険加入義務・求償権(甲を追加被保険者とする)
  • 衛生管理・事故対応(一次窓口、費用負担)
  • 秘密保持・競業避止(レシピ・顧客リスト等の保護)
  • 解約・損害賠償(重大違反時は即時解除、違約金の設定)

5. 実務チェックリスト

ステップ

内容

① 物件オーナー事前協議

転貸禁止条項の確認と使用承諾書/契約変更の締結。

② 行政許可

保健所へ名義変更または営業許可追加申請。

③ 保険証券確認

火災・施設賠償・PL保険の被保険者範囲・免責金額を突き合わせる。

④ 契約書ドラフト

売上区分・歩合・インボイス対応を含む条項を作成。

⑤ 試行期間

1〜3か月の短期契約でオペレーションと歩合率を検証。

6. 選択の目安

重視する点

推奨方式

売上・原価・顧客データを一元管理したい

方式①:オーナー売上型

経理負荷を最小化し「場所貸し」に徹したい

方式②:委託者売上型

賃貸借契約の転貸リスクを避けたい

方式①

委託者が自前決済・モバイルオーダーを持っている

方式②

7. まとめ

休業日の間借り営業は収益性が高い一方で、転貸禁止条項の承諾、火災・賠償保険の再設計、保健所許可の名義整理、インボイスを含む消費税処理を怠ると、契約解除や多額の損害につながります。方式①は管理と法令対応がシンプルで安全性が高い反面、オーナー側の消費税・経理負担が重い。方式②は経理が軽いものの、転貸リスクと売上監査の難しさがあります。契約書に具体的手続きを明記し、四者(オーナー・委託者・物件オーナー・行政)合意のもと導入してください。


投稿日: by 税理士 土屋 雄志.

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